数学オリンピック本選2023 第4問

www.imojp.org

前提知識

p=2版のLTE補題として以下が成り立つ(証明はLTEの補題とその応用~一般化へ向けて~ | Mathlogの定理3とかを参考にするといいです)

nが偶数かつv_2(x)=v_2(y)=0のとき

v_2(x^n-y^n)=v_2(x^2-y^2)+v_2(n)-1

特にy=1なら

v_2(x^n-1)=v_2(x+1)+v_2(x-1)+v_2(n)-1\geq v_2(x-1)+v_2(n)

LTE補題を使わずに

n=b\cdot 2^a (a=v_2(n))とおいて

x^n-1=(x^{b\cdot 2^{a-1}}+1)(x^{b\cdot 2^{a-2}}+1)\cdots (x^{b}+1)(x-1)(x^{b-1}+x^{b-2}\cdots +1)

を用いて直接求めてもよい

 

解法

n=p_1^{e_1} \dots p_k^{e_k}(p_iは互いに異なる素数)とおくと

d(n)=(e_1+1)\dots (e_k+1)

\phi (n)=p_1^{e_1-1} \dots p_k^{e_k-1} (p_1-1)\dots (p_k-1)

よってe_i\gt 1となるようなiがあった場合\phi (n)p_iで割り切れるので\phi (n)^{d(n)}+1p_iで割り切れず1つ目の条件に矛盾

したがって整理すると

n=p_1 \dots p_k

d(n)=2^k

\phi (n)=(p_1-1)\dots (p_k-1)

と表せる

p_iに偶素数と奇素数がともに含まれていた場合\phi (n)^{d(n)}+1は奇数でnは偶数になるので矛盾

素数のみの場合はn=2しかありえずこれは条件を満たす

またn=1は条件を満たさない

以下p_iは全て奇素数k\geq 1とする

1つ目の条件は\phi(n)^{2^k}\equiv -1\pmod nと書け、中国剰余定理より任意のiにおいて、

\phi(n)^{2^k}\equiv -1\pmod {p_i}

ap_iの原始根としa^m \equiv \phi(n)\pmod {p_i}(m\lt p_i-1)だとするとa^{m\cdot 2^k}\equiv -1\pmod {p_i}だから

(p_i-1)/2\mid m\cdot 2^kかつp_i-1\nmid m\cdot 2^k*1

したがってv_2(p_i-1)=v_2(m\cdot 2^k)+1=v_2(m)+k+1\geq k+1\cdots (1)

2つ目の条件に着目する

\phi(n)が偶数かつnは奇数だからp=2版のLTE補題を使うと

v_2(n^{\phi(n)}-1)\geq v_2(n-1)+v_2(\phi(n))\cdots (2)

(1)より任意のiにおいてp_i\equiv 1\pmod{2^{k+1}}なので、n\equiv 1\pmod{2^{k+1}}となり

v_2(n-1)\geq k+1\cdots (3)

また\phi (n)=(p_1-1)\dots (p_k-1)及び(1)より

v_2(\phi(n))\geq k(k+1)\cdots (4)

よって(2),(3),(4)よりv_2(n^{\phi(n)}-1)\geq (k+1)^2

ここでv_2(d(n)^5)=v_2(2^{5k})=5kだから

2つ目の条件より(k+1)^2\lt 5k

したがってk=1,2

k=1の場合

(\phi(n)^{d(n)}+1)/n=( (p_1-1)^2+1)/p_1=p_1-2+2/p_1より整数とならないので矛盾

k=2の場合

v_2(p_i-1)\geq k+1=3が成り立つ

ここでv_2(p_1-1)=v_2(p_2-1)=3を仮定すると

n=p_1 p_2だからv_2(n-1)\geq 4より(2),(4)と併せて

v_2(n^{\phi(n)}-1)\geq 10=v_2(d(n)^5)より矛盾

一般性を失わずにv_2(p_1-1)\geq 4とする

v_2(\phi (n))=v_2( (p_1-1)(p_2-1))=v_2(p_1-1)+v_2(p_2-1)\geq 7だから(2),(3)と併せて

v_2(n^{\phi(n)}-1)\geq 10=v_2(d(n)^5)より矛盾

 

したがって条件を満たすのはn=2のみである

*1:(ℤ/p_iℤ)^×は位数p_i-1巡回群であり、a^{(p_i-1)/2}\equiv -1になることを利用している